吉村誠司の代名詞となる作品は、先にも取り上げた「硝子を透して」です。本作のタイトルは、モティーフを繊細な線描と淡い色彩で表現した吉村作品の本質につながるものと言えるでしょう。2011年には小学館から『硝子を透して: 吉村誠司作品集』を出版して好評を博しました。2018年から2019年に開催された個展でも展覧会名に「硝子を透して」を冠しています。そごう横浜店・神戸店・西武池袋本店・そごう千葉店を巡回した本展は、現代具象絵画の最高峰と称される吉村の繊細かつ独特な作風を広く伝えるものとなりました。
2000年に 第6回足立美術館賞を受賞した「水族館」、2011年の第17回足立美術館賞受賞作の「陽光」では、幻想的な空間に多様な種類の魚や鳥を自由に配置し、細部まで計算された吉村の独創的な世界観が詰め込まれています。幻想的でありながら緻密に描写された吉村作品には、鳥や魚、風景、人物などさまざまな題材が取り上げられますが、すべての作品に吉村ならではの独特の色彩表現が見られます。吉村が独自の色彩と繊細な線で描き出す夢幻世界は、現代日本画の具象画を牽引するものとして、揺るぎない評価を受けています。