東京美術学校の西洋画科入学から始まり、日本画への転向、古典大和絵への接近、さらに西欧近代洋画の吸収などを通して、時代に即した新しい日本画の創造を目指した蓬春は戦後の日本画のひとつの指針を示した存在と位置付けられます。戦前の新興大和絵時代を経てたどり着いた戦後の作品には、省略や強調の手法を交えた蓬春独自の画風が豊かに展開されます。昭和30年代には、西洋画のリアリズム表現へと傾倒し、同じモチーフの静物画を繰り返し描きます。枇杷や白菜を即物的に描きながらも、隈取りのような陰影が特徴的であり、西洋的写実描写でありながら日本画として充分に成り立つ表現は、多様な画風を吸収した蓬春ならではの境地と言えるでしょう。
1964年から手掛けた「春夏秋冬」四部作では、それまで大和絵の不自然な鳥の配置をきらって避けてきた小鳥も描き込み、伝統的花鳥画を現代の視点でとらえた新鮮な作品を生み出しました。晩年の静物画や花鳥画は、清澄な色彩がますます深みを増し、和洋を折衷した明快で新鮮な作品は、その近代的な明るさと洗練された構図によって、今なお高い評価を受けています。