こんにちは。絵画・骨董品の買取を専門で行っている美術品買取専門店獏の小林です。
歴史的な価値は専門家が解説するとして、買取専門店という立場からいろいろ思った事を記してみます。
衝撃的なニュースが入ってきました。我々業界内でもビックリなニュースです。
早速、大手メディアから詳細抜粋します。
北斎作品の落札額としては史上最高額
江戸後期の浮世絵師・葛飾北斎(1760~1849年)の肉筆画「雪中美人図」が、東京都内で開かれたオークションで6億2100万円(手数料込み)で落札されたことが11日、オークション会社への取材で分かった。落札者は家具・日用品販売大手のニトリ(札幌市・似鳥昭雄会長)で、北斎作品の落札額としては史上最高額だという。
オークションは「東西ニューアート」(東京都中央区)が8日開催。作品は似鳥文化財団が運営する小樽芸術村・浮世絵美術館(北海道小樽市)に収蔵され、今後展示される予定という。
引用;神戸新聞社
https://www.kobe-np.co.jp/news/zenkoku/compact/202511/0019693896.shtml
高い、高すぎる
美術品を商売として扱わせていただいている立場からすると、日本人作家の評価が上がるのは嬉しいです。しかしながら、今回はかなり相場とかけ離れた価格帯かなと思いました。個人的な感想としては1億超えたら御の字かなと思っていました。
ちなみに落札予想価格は4000~6000万円となり、落札予想価格とはオークション会社が個人のコレクターに対して【適正相場】として明示しているモノです。コレクターからすると美術品の相場は分かりにくく、いくらが適正価格なのか?これは本物なのか?価値があるか不明・・、のように思うでしょう。そのため、オークション会社からするとコレクターが参加しやすくするために適正な市場価値を明示してくれてます。落札されないとオークション会社が収益を得れないため当然の流れですね。
ただ、たまに業者からみても相場より高めに設定しているような落札予想価格があるのでそれなりの勉強は必要かなと思います。
話を戻しますと、プロが予想した価値の約10倍まで競りあがりました。私も多くのオークションを見てきましたがここまで価格差があるのは珍しいです。
なぜこのような事が起きたのか推測してみます。
一級品は相場が関係ない事も
一流と言われる作家の一級品は相場が合ってないような世界です。需要と供給のバランスが取れていると相場というものが形成され、それが市場価格として判断されます。
私たちのような買取業者もこのような市場価格を参考にして価値を判断させていただいております。しかしながら、ごく一部のめちゃくちゃ人気があって希少性がある作家は相場の上振れで落札されることも多いです。
一級品の定義は?
ちなみに一級品の定義も独断と偏見で解説します。一級品とはその作家の作品でも高いクオリティを持つ作品です。その作家が制作した作品の上位数%程度でしょう。
一般的な作家は晩年に制作されたものが評価しやすい傾向ですが、ユトリロやピカソのように割と若い時代の作品の方が評価されるケースもございます。
相場を作ろうとしている?
相場をコントロールしようとしてるのでは?という穿った見方もできます。
先ほどオークションの落札結果を参考にして買取価格を決める事もありますと伝えました。私たちも突発的に金額が上がったとしてもたまたまと済ませる事が多いですが、相場より高い金額で落札され続けると【もしかしたら相場が上がっているかも?】と思ったりします。
作品によっては莫大なお金が必要ですが、高い金額で落札した実績を残すと上記の理由から相場が上がったりすることがあります。株式など利害関係者が多い場所だと相場のコントロールは無理ですが、アートのような比較的閉鎖的な空間ならあり得るかもです。
結論、相場を上げてどうするのか?事前に安い価格で大量に作品を買い、相場が上がったタイミングで換金してその差額で利益を出す感じです。一方、純粋に作家を応援したい、という人もいるかもですね。
お金持ちたちの意地と意地のぶつかり合い
ムキになってしまったのではないかと。札束の殴り合いですね。
まとめ
日本作家の作品が金銭的な評価をされることは同じ日本人として喜ばしいです。私どもも美術・骨董品の買取サービスを通じて少しばかり貢献出来たらなと思いました。
