「蔵から棟方志功らしき版画が出てきた」「相続した遺品の中にあの特徴的な女性像がある」
そんな時、誰もが最初に抱く疑問は「これは本物なのか、それとも精巧なレプリカなのか?」という点でしょう。
棟方志功は日本で最も人気のある芸術家の一人であるがゆえに、古くから多くの模倣品や工芸印刷(レプリカ)が作られてきました。本物であれば数十万〜数百万円という価値がつく一方で、レプリカであれば価値はゼロになってしまいます。
本記事では、手元の作品が「本物」である可能性を判断するためのチェックポイント、そして本物だった場合の価格レンジや鑑定の手順を詳しく解説します。
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※なお、棟方志功の真贋は最終的に専門家以外では断定できません。本記事ではセルフチェックで可能性を整理し、その後の鑑定・査定までの最短手順も解説します。
棟方志功の版画「本物」の見分け方|4つのセルフチェック
プロの鑑定士が作品を見る際、最初に着目するポイントを整理しました。まずはご自身で以下の4点を確認してみてください。
① 「裏彩色(うらさいしき)」の有無
棟方志功のカラー版画の多くは、紙の表面から色を塗るのではなく、和紙の「裏」から色を差す技法(裏彩色)を用いています。

本物: 表から見たときに、色が紙の繊維を通して内側からボウっと滲み出ているような、柔らかい発色をしています。
偽物(印刷): 表面に色が乗っているため、色が均一で平坦です。拡大鏡で見ると、色の部分が細かいドット(点)の集まりに見える場合は、オフセット印刷によるレプリカです。
実際の査定現場でも、裏彩色が確認できず印刷物だったケースや、逆に地味な小品でも裏彩色が見つかり高評価となったケースがあります。
② 墨の「溜まり」と「かすれ」
棟方の作品は強靭な筆致と彫り跡が特徴です。
本物: 手摺りの版画は、墨の濃淡がはっきりしています。特に、彫った溝に墨が溜まった跡や、和紙の繊維に墨が食い込んでいる様子が見て取れます。
偽物: 墨の色が全体的に一様で、黒色が浅い(グレーに近い)傾向があります。
③ 鉛筆サインと落款(ハンコ)の有無
棟方作品の多くには、画面の下部や余白に鉛筆による直筆サインや、独特の形をした落款が押されています。

注意点: サインがあるからといって100%本物とは限りません。後年、版木から遺族などが摺り出したもの(後摺り)にはサインがない場合が多く、評価額は本人の直筆サイン入りに比べて下がることが殆どです。
④ 紙の質感(越前和紙など)
棟方は薄くて丈夫な和紙を好んで使いました。非常に薄い紙に力強く摺られているため、紙に独特の「波打ち」や、版の跡(凹凸)が残っているのが本物の特徴です。
※これらはあくまでセルフチェックの目安です。
近年は非常に精巧な工芸印刷や後摺り作品も多く、外見だけで真贋を断定することは専門家でも容易ではありません。最終的な判断は必ず専門家や鑑定機関に相談することをおすすめします。
知っておきたい「模倣品」と過去の事件
棟方志功ほど知名度が高い作家になると、悪意のある「贋作(がんさく)」だけでなく、善意で作られた「工芸品」が本物と混同されるケースも多々あります。実際、過去に真贋をめぐる混乱が何度も起きています。
見た目では区別できない「後摺り(あとずり)」
棟方志功の版画で特に判断が難しいのが「後摺り作品」の存在です。棟方志功の多くの作品は版木(はんぎ)が残されており、没後に遺族や関係者によって再度摺られた作品が市場に流通しています。これらは同じ版木から摺られているため、図柄そのものは本人生前の作品と全く同じに見えます。
しかし制作年代が異なるため評価額は大きく下がり、生前摺りに比べて半額以下、場合によっては数分の一になることもあります。外見だけで見分けるのは非常に困難で、専門家でも慎重な判断が必要な分野といえるでしょう。
工芸印刷・カレンダーの切り抜き
かつて生命保険会社や銀行のノベルティとして、非常に精巧な棟方志功の工芸印刷(レプリカ)が配布されていました。これらが立派な額縁に入れられ、数十年を経て遺品整理の現場で見つかり、「本物では?」と相談を受けることが少なくありません。
過去の真贋騒動
棟方作品は過去に大規模な真贋論争が起きたこともあります。それほどまでに「本物に近い偽物」を作る技術が存在するため、素人判断で「本物」と決めつけて売買を行うのは極めてリスクが高いと言えます。
実際の査定現場でも、棟方志功作品の真贋相談は非常に多く寄せられます。例えば、「印刷だと思っていたら裏彩色が確認でき高評価になった」ケースや、反対に「サインがあっても工芸印刷だった」というケースが少なくありません。
このように、見た目の印象と実際の市場評価が大きく食い違うのが棟方志功作品の特徴です。自己判断で処分してしまう前に、一度専門家の目で確認することが重要だといえるでしょう。
もし本物ならいくら?「期待値」の整理
棟方志功の作品が「本物だった場合」の価格は、作品のシリーズやサイズによって決まります。
| 作品タイプ | 特徴 | 予想価格レンジ(買取・査定) |
|---|---|---|
| 最高級(代表作) | 「釈迦十大弟子」や「手彩色入りの女性図」 | 数百万円 〜 1,000万円以上 |
| 普及帯(人気モチーフ) | 「女人像」等のサイン入り板画 | 50万円 〜 300万円 |
| 肉筆画(倭画) | 筆で直接描かれた一点もの | 100万円 〜 500万円 |
| 小品・サインなし | 小さな板画、後摺りなど | 5万円 〜 30万円 |
※価格は市場動向や作品の状態によって変動します。
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本物と確定させるための「鑑定」の手順
手元の作品に本物の可能性を感じたら、次のステップは「公的な鑑定」です。
棟方志功鑑定登録委員会
現在、国内で唯一、棟方志功の真作を公式に認定できるのは「棟方志功鑑定登録委員会(公式サイト:https://www.munakatashiko.jp/)」です。
- プロセス: 作品を委員会に預け、専門家による審査を受けます。
- 登録証: 真作と認められると、作品の裏面に「シール」が貼られ、これが「本物である証明書」となります。
棟方志功鑑定登録委員会による鑑定書
現在効力がないタイプの古い鑑定書
鑑定には費用と時間がかかる
自身で鑑定を依頼する場合、数万円の鑑定料が必要となり、結果が出るまで数ヶ月かかることもあります。また、もし「偽物」と判定された場合でも鑑定料は戻ってきません。
最短で価値を知るための「賢い方法」
「本物かどうか知りたいけれど、いきなり高額な鑑定料を払うのは不安……」
そのように迷われている方は、まずは「美術品の専門買取店による無料査定」を利用するのが最も効率的です。
経験豊富な査定士であれば、鑑定委員会に出す前段階で「本物の可能性が高い」か「残念ながらレプリカであるか」の目星をつけることができます。
※画像で判断できないケースも多々ありますので、その際はご理解ください。
次の行動:まずは写真査定から
写真査定を依頼する際のおおまかな流れは以下の通りです。
1. 作品全体、サイン・落款のアップ、裏面の撮影
2. LINEやメールで専門店の無料査定に送信
3. 価値がある場合は鑑定代行を依頼
写真査定を依頼する際のポイント
査定を依頼する際は、写真の撮り方によって判断精度が大きく変わります。作品全体だけでなく、鉛筆サインや落款のアップ、裏面、紙の質感が分かる斜めからの写真など、細部まで撮影するのがコツです。
室内灯の反射や影が強い写真では正確な判断が難しくなるため、自然光で明るく撮影するとより正確な評価につながります。

まとめ
棟方志功の作品は、他の日本画家と比べても相場が保たれています。「本物かもしれない」という直感を、確かな価値に変えるために、まずは一歩踏み出してみませんか?


