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贋作は買取価値がある?贋作の定義から違法性を解説

『人々が買いたがるようなアート作品であれば必ず偽物がつくられている』

1904年にフランスの美術史家であり批評家のポール・ドゥリュー伯爵が発表した記事の一文です。

時計やブランド品など、需要が高まるところには必ず『偽物』という問題が発生し、現在もブランド側と偽物取扱い業者との間でいたちごっこが続いている状態です。
美術品業界も同じくです。上の一文から、アートも100年以上前から偽物と付き合ってきたことがよくお分かりいただけるでしょう。
偽物の登場は貨幣経済の弊害のひとつであり、また 資本主義の闇とも言えるのではないでしょうか。

美術品における偽物は『贋作(がんさく)』と呼ばれます。
今回は美術品とは切っても切れない関係にある『贋作』について、様々な角度から紹介させていただきます。

そもそも贋作とは?贋作の定義を解説


『贋作』という言葉の意味は上で書いた通り「偽物の美術品」です。耳にしたことのある方も多い事と思います。
皆さん意味をご存知だとは思いますが、どんな内容でも入り口が肝心!ということで、改めて『贋作』の意味をきちんと調べてみました。

贋作(がんさく)とは――

制作者あるいは制作年代などを偽って,買手をだます意図のもとに制作された美術品。現存作品もしくは実在した作品をそのまま模倣したもの,特定の作者または時代の様式を模倣したもの,いくつかの原作をもとにその諸部分を集めて作られたものなどがある。
(出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)

贋作を英訳すると”art forgery”、直訳は「芸術の偽造」となり、対象は美術品のみです。
要約するとポイントは2点、【既存の作品やイメージを模倣】、【騙す意図の有無】ではないでしょうか。これら2点を満たすものが一般的に贋作と呼ばれています。

1点目のポイントである【既存の作品やイメージを模倣】は目視で確認が可能ですが、2点目の【騙す意図の有無】に関しては証明することが困難です。
過去に、騙す意図無しに作られたものが贋作となってしまったケースがあります。

江戸時代に飛ぶ鳥を落とす勢いで日本美術を牽引していた狩野派は【粉本(ふんぽん)主義】という学習方法を採用していました。「粉本」とは「絵の下書き」という意味ですが、もうひとつ「先人のものを真似る」という意味もあります。絵画集団である狩野派の技術を維持するために、学習方法として先人の作品を模倣する方法が採用されていました。
騙す意図は無かったものの、結果として先人の有名作家作品の模写が数多く世に残りました。後にそれらが悪意ある人の手に渡り、サインが入れられ本物として販売されてしまったそうです。

学習方法のひとつとして模写を作成した狩野派の方々は全く悪くなく、そこで生まれた模写作品にも罪はありませんが、結果として騙す意図が付け加えられ、贋作の2条件が揃ってしまった。非常に辛いケースです。

贋作の購入/売却は違法?絵画買取の法律について


贋作を本物と偽って売買する事は違法です。

刑法246条1項 詐欺罪(第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する)に該当します。

現在はフリマアプリやインターネットオークションの普及により、個人が美術品を容易に売買する事が可能となりました。このようなプラットフォーム上では法整備が追い付いていないそうですが、疑わしき作品を本物として売却する事は詐欺罪として罪を問われるリスクがあります。

「本当に本物だと思い込んでいた」と言われてしまうとそこまでなので、詐欺罪は証明する難しさがあるかもしれませんが、美術品を売却する相手は業者の方がリスクは低いでしょう。

贋作とレプリカ・偽物との違い


これまで『贋作』という言葉について説明してきましたが、世の中には似たような言葉が他にもあります。『レプリカ』と『偽物』です。普段何気なく使用している言葉だと思いますが、意味が若干異なります。

簡単に説明すると【贋作≒偽物、贋作≠レプリカ】です。

偽物という言葉は贋作と似たような意味合いですが、はじめにも書いたように使われる対象物が異なります。
贋作は美術品に対してのみ使われますが、偽物の対象は特に明確にされておらず美術品に対しての使用も可能です。また、モノだけに限らずサービスに対して使われることもあり、「本物ではない模倣されたもの」は形の有無に関わらず偽物という言葉が使われます。偽物という大きな枠の中に『贋作』があるイメージでしょうか。

一方レプリカとは、オリジナルを基に原作者または制作工房によって作られたものです。【オリジナルと同一の見た目である事】と【誰が作ったか】の2点が重要です。第三者がオリジナルと同一の見た目で作品を模倣した場合、レプリカには含まれません。

わかりやすい例として、サッカーのユニフォームがあります。
「レプリカユニフォーム」という言葉を聞いたことはないでしょうか。
レプリカユニフォームとは、選手が実際に着用しているユニフォームと同じ見た目(※機能は異なる)のウエアで、ファンが着用して応援できるように大量生産・販売されています。
正規品ではないユニフォームも多く作られていますが、権限を持っている業者が制作したユニフォーム以外はレプリカと呼ばれていません。

他にも似たような言葉はあります。
『オマージュ』『パクリ』『パロディ』の違いはコチラで解説しています。
https://www.baku-art.co.jp/businessblog/otaku/2020080790.html

贋作に買取価値はあるのか?


贋作には買取価値はありません・・・とハッキリ申し上げたいところですが、絵画・美術品の買取を行っている立場からすると、難しい質問です。

当社は基本的に贋作と判断させていたただいた作品に関しては買取を行っておりません。
ただそれは、当社が行っている商売の作品に対する評価基準が「誰が書いたか」であるからです。
美術業界内には「作品そのもの」に価値を見出す世界も存在します。そのような世界では一定以上のクオリティがある作品に関して、真贋(本物か偽物か)は大した問題ではなく、
贋作であっても買取価値があるのかもしれません・・・。
美術品購入には様々な目的がありますが、その中の1つは「鑑賞して楽しむこと」です。そこに真贋は関係なく、価値は持ち主自身が決めることですね。

有名な贋作事件や贋作師(贋作画家)を紹介


贋作は有名且つ市場価値が高い作品に対して多く作られる傾向です。今から紹介するエピソードもそのような作品ばかりで、どれもユニークな物語となっています。
贋作にこんなドラマがあるとは・・・記憶に残るエピソードを紹介させていただきます。

ハン・ファン・メーヘレン


「ナチスを騙した男」という通称で有名な贋作師 ハン・ファン・メーヘレンをご存知でしょうか。
ハン・ファン・メーヘレンは「真珠の耳飾りの少女」という作品で有名な作家フェルメールの贋作を作ることで有名な人物です。

メーヘレンについて語る前に、贋作を作られた側であるヤン・フェルメール(1632〜1675)について知る必要があります。
フェルメールは最も偉大なオランダ人画家のひとりです。日本国内でも回顧展が開催されるほど有名で、フェルメールに関するグッズも多数販売されています。作品自体は写実的で美しい構図、特に光の質については非常に高い評価を得ています。
しかし、そんなフェルメールも存命中は作家として大きな人気は無く、現在の様な人気作家となったのは死後約200年も後のことだった・・・という事実をご存知でしょうか。

フェルメールは、1866年にフランス人著述家のテオフィル・トレに発見されるまで、現在の様に偉大な作家とは認識されていませんでした。1675年に亡くなってから約200年の間、注目を浴びることはありませんでした。

贋作師メーヘレンはフェルメールと同じオランダ出身です。フェルメールの価値が見出された1866年から20年以上経過した1889年に生まれました。メーヘレンは幼い頃から画家を目指していましたが、オランダ画壇に認められず作家としては大成しなかったそうです。

そのような経緯から、彼は自身の作品を作ることを止め、当時人気だったフェルメールの贋作制作に着手しました。17世紀の顔料を用いてフェルメールが描きそうな作品を生み出し、批評家にフェルメール本人の作品であると認めさせることに成功しました。こうして作家としてではなく贋作師として成功を収めたのです。

しかしながら、贋作師としての成功の日々は長くは続きませんでした。
当時オランダと敵国関係にあったナチスドイツに対して、オランダの国宝級作家であるフェルメールの作品を売った疑いで逮捕されました。しかし、実際はフェルメールの作品でなく自身で作った贋作だったと白状し、「ナチスを騙した男」として時の人となりました。

マーク・ランディス


2015年に公開された映画「美術館を手玉にとった男」はご存知でしょうか。
贋作師マーク・ランディスが引き起こした奇妙でほっこりとする贋作物語を追ったドキュメンタリー映画です。

それは2011年にニューヨークタイムズやテレビなど、全米のメディアが注目した出来事でした。多くの美術館で展示されていた著名な作品の数々が、実はランディスが描いた贋作だったと判明したのです。その作品数は100を超えており、全米で20州、46もの美術館を30年間だまし続けていました。
しかしながら、すべての贋作を無償で寄贈していたため、逮捕されるには至りませんでした。

世間を騒がせた贋作師マーク・ランディスは1955年にアメリカ・バージニア州生まれ。幼少期から絵を模写しはじめ、シカゴ美術研究所で本格的に美術を学びました。卒業後はサンフランシスコでアートギャラリーを開くも思うような成果が出ず、10年ほどで店を閉じました。

その後、彼は自身が制作した贋作を次々と美術館へ寄贈します。彼の目的は贋作を売ってお金を得ることではなく、「権威性がある美術館からの感謝状」でした。そのような施設から感謝状が届くのは非常に光栄なことで、彼の母親がたいへん喜んだそうです。

世の中に出回る贋作には悪意が詰まっている事が殆どです。しかしながら、ランディスが贋作を作った目的は感謝される事、母親や美術館に喜んでもらえる事でした。
善意から生まれた、非常に珍しいケースです。

トランプ大統領のルノワール事件


2017年に飛び込んできたニュースです。
アメリカ・シカゴ美術館に所蔵されているはずのルノワール絵画「2人の姉妹(テラスにて)」をトランプ大統領も所有しているというニュースです。

ドナルド・トランプ米大統領が、フランスの印象派の巨匠ピエール・オーギュスト・ルノワールの原画を所有していると主張したとされることに対して、アメリカ・シカゴにある美術館が本物は84年前から所蔵しているとして異を唱えました。
(引用 https://www.afpbb.com/articles/-/3147811 AFPニュースより)

何かと騒がしいトランプ大統領ですが、まさかアートの世界でも炎上を起こすとは・・・非常に驚きました。
アメリカ・シカゴ美術館側はAFPの取材に「この作品は間違いなく当館のコレクションに含まれています」と電子メールで答えました。

絵画・美術品の買取を行っていると東山魁夷や片岡球子といった近代巨匠から、草間彌生のような現代作家まで幅広い贋作に遭遇します。明らかなニセモノから精巧なものまでクオリティは様々ですが、流石に美術館に収蔵されている作品と同じ図柄でホンモノと主張している方には出会ったことがありません。

後日談は語られてはいませんでしたが、トランプ大統領の性格や振る舞いを考慮すると自身が所有しているルノワールの方が本物だと思っているのでしょう。

まとめ


贋作とは、商売という観点から見ると非常に頭が痛い問題ですが、ひとつひとつの贋作にはそれぞれの物語があります。物の価値は見る角度や見る人によって異なり、アート・美術を真正面から見ると贋作は本物の陰に隠れた存在です。
しかしながら、贋作であっても制作されてから200〜300年以上経過して「骨董」としての新たな価値が出たり、その贋作師が何かのきっかけで有名になった時には需要が生まれるかもしれません。非常に精巧で物語性あるという理由から評価された贋作(スパニッシュ・フォージャー/中世から19世紀末の模造品を描いた人物)もあります。贋作がオリジナルへ変わる珍しい事例です。

絵画・美術品を買取する立場からすると贋作に対してはNoと言わざるを得ませんが、ひとつの物語として贋作に触れるのは面白いかもしれません。

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