「色彩の魔術師」と称され、愛と幻想を描き続けたマルク・シャガール。彼の代名詞とも言えるリトグラフ(石版画)は、現在も世界市場で安定した人気を誇っています。
しかし、実際の相場を見ると、数万円から数百万円まで大きな価格差があり、混乱する人も少なくないでしょう。
「シャガールのリトグラフは今いくらで売れるの?」
「評価が高い作品と安い作品の違いは何?」
本記事では、美術品買取専門店の視点から、最新オークションデータをもとに、シャガールのリトグラフの相場と、価格を左右する評価基準を徹底的に解説します。
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シャガールのリトグラフの相場はいくら?価格帯の目安
シャガールのリトグラフの相場と評価は、単なる人気ではなく、国際市場での流通データに基づいて形成されており、大きく3つに分かれます。
| 種類 | 相場 |
|---|---|
| オリジナル作品 | 数万円~300万円以上も |
| 直筆サイン入り作品 | 10万円~100万円以上も |
| エステート版・ポスター | 1万円~15万円程度 |
【1】数百万円クラス|希少なオリジナル作品
特徴:
- 作家存命中に制作のオリジナル・リトグラフ
- 限定部数が少ない
- 『ダフニスとクロエ』『サーカス』など人気ポートフォリオ(作品集)の作品
- シャルル・ソルリエによるソルリエ版
保存状態が良好な大判作品は、オークションで高額落札されるケースもあります。
近年では「ダフニスとクロエ」シリーズが毎日オークションで260万円で落札されるなど、高評価作品は安定した需要があります。

【2】数十万円クラス|直筆サイン入り作品
特徴:
- 鉛筆による直筆サイン入り
- エディション(部数)管理あり
- 1960~80年代にかけて多く制作
「恋人」「花」「青い背景」「パリの風景」など、シャガールらしいモチーフは評価が安定しています。

【3】数万円~15万円前後|エステート版・リトポスター
特徴:
- 版上サイン(印刷サイン)
- 刷り師が後から起こした版
- 死後に制作されたエステート版(遺作版画)
- 展覧会ポスター
資産性は高くありませんが、装飾用として需要があります。

シャガールのリトグラフの評価を決める5つの条件
なぜ、同じシャガールのリトグラフでこれほどまでに差が出るのでしょうか。プロの鑑定士がチェックするポイントは以下の5点です。
① 直筆サインの有無
最大の評価分岐点です。
- 余白に鉛筆直筆サイン → 高評価
- 版上サイン(印刷サイン) → 評価は抑えめ
直筆サインの有無で相場は数倍変わります。

② カタログ・レゾネ掲載の有無
シャガールの版画は、全作品を網羅した公式目録(カタログ・レゾネ)が存在します。
公式目録に掲載されている作品は真作としての評価が安定しますが、逆にレゾネ未掲載作品は慎重査定になります。
③ 図柄(モチーフ)の人気度
市場は「シャガールらしさ」を強く求めるため、シャガールの世界観が強く出ているものほど高く評価されます。
評価が高いモチーフ:
- 空飛ぶ恋人
- ヴァイオリンを弾くヤギ
- 赤い花束
- 青を基調とした幻想的構図
- パリのランドマーク
評価が控えめ:
- 聖書シリーズ(モノクロに近いもの)
- 抽象性の高い晩年作

④ コンディション(保存状態)
リトグラフは紙に摺られた作品です。紙作品は状態の良し悪しが評価に直結します。
- ヤケ・退色: 色鮮やかなシャガール作品にとって、退色は致命的。
- シミ: 古い作品に現れる茶色い点々のシミ。
- 波打ち: 湿気による紙の変形。
- 破れ:下地の紙が破れている状態。
上記のようなコンディション不良は、相場を30~50%下げることもあります。
⑤ 制作工房(ムルロ工房・ソルリエ版)
シャガールのリトグラフの多くは、名門ムルロ工房で制作されました。
特に天才刷り師シャルル・ソルリエが手がけた作品は「ソルリエ版」と呼ばれ、そのクオリティの高さから評価が一段と高くなります。
買取相場と販売価格の違い
多くの方が誤解されるのが、「買取相場」と「販売価格」はまったく別物であるという点です。
例えば、
買取相場:40万円 ⇔ 画廊販売価格:80万~120万円
というケースは珍しくありません。
「なぜこんなに差があるのか」と疑問に思われる方も多いでしょう。しかし、この価格差には明確な理由があります。
なぜ差があるのか?
販売価格には、単なる作品代だけでなく、以下のようなコストが含まれています。
- 真贋保証(一定期間の保証責任)
- 専門的な額装費用
- ギャラリーの人件費・家賃などの運営経費
- 在庫として保有するリスク
- 売れるまでの広告・営業コスト
画廊は作品を仕入れた後、すぐに売れるとは限りません。数ヶ月から数年単位で在庫として保管することもあります。そのリスクを織り込んだ価格が「販売価格」なのです。
一方、買取相場は「再販売を前提とした卸値」に近い水準になります。そのため、一般的には販売価格の1/2~1/3程度が買取価格の目安と考えられています。
シャガール リトグラフの評価においても、この構造は同じです。販売価格だけを基準に期待値を持ってしまうと、実際の査定額とのギャップに驚くことになります。
正しい相場観を持つためには、「今いくらで売られているか」だけでなく、「実際にいくらで落札・取引されているか」という市場実勢価格を見ることが重要です。
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シャガールのリトグラフは今後値上がりする?
結論から言うと、大幅な高騰は考えにくいものの、価格は安定傾向です。
理由:
- 既に国際評価が確立している
- 市場流通量が多い
- 世界的コレクター層が存在
円安局面では海外流通が活発になり、国内相場が下支えされる傾向があります。
また、相場が安定しているのは、彼が描いた「愛」というテーマが、時代や国境を超えて求められ続けているからとも言えます。
売却を検討している方へ|評価を下げないためのポイント
遺品整理やコレクション整理で売却を考える際、損をしないためのステップです。
- 保証書を保管する
- 無理に掃除をしない
- 「版画に強い」専門店を選ぶ
購入時の画廊の保証書があれば、真贋の証明がスムーズになり、査定額がアップします。
額縁の汚れを拭く程度なら良いですが、中の紙を触るのは逆にダメージを与えるおそれがあるため厳禁です。
プロの修復が必要な場合もあるため、そのままの状態で査定に出してください。
シャガールのリトグラフは流通量が多いため、専門知識の差が査定額に直結します。
最新のオークション相場を把握している専門店でないと、正当な評価がなされないリスクがあります。
購入を検討されている方へ|失敗しないためのポイント
「憧れのシャガールを部屋に飾りたい」という方は、以下の視点を持つと賢い買い物ができます。
- 「投資」ではなく「愛着」で選ぶ
- オークション相場を参考に
シャガールの版画はすでに相場が完成されており、急激な値上がりは期待しにくいです。
そのため、「毎日見て幸せになれるか」を基準に、予算に合うエディション(直筆サインか、エステート版か)を選ぶのが正解です。
販売店価格は、買取相場の1.5〜3倍程度に設定されるのが一般的です。
あまりに相場から乖離した価格でないか、専門店のアドバイスを聞くのが無難です。
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まとめ|シャガールの相場と評価は「条件」で決まる
シャガールのリトグラフの相場は数万円から数百万円まで幅広く存在します。しかし、その評価は感覚ではなく、
- サインの有無
- レゾネ掲載
- モチーフ
- コンディション
- 制作工房
という明確な基準で決まります。
手頃な作品にも「シャガールの世界を共有できる」という魅力があります。シャガールのリトグラフを保有する際は、「資産目的」か、「装飾目的」かを明確にし、適正な相場観を持つことが重要です。
相場や評価が気になる方は、まずは無料査定で現在の市場価格を確認することをおすすめします。



